エル・ジェムの円形闘技場
Amphitheatre of El Jem

概要

チュニジア中部の町エル・ジェムに残る円形闘技場は、3世紀前半にローマ帝国属州アフリカの都市ティスドルスで築かれた、北アフリカ最大級のローマ闘技場である。ローマのコロッセオに次ぐ規模ともいわれる楕円形アリーナと重層の観客席は、古代ローマの高度な石造建築技術と、オリーブ油交易で栄えた属州都市の公共娯楽文化を今に伝えている。

基本情報
チュニジア
1979年:新規登録,2010年:範囲拡大
検定ではここを覚えよう
  • 保有国: チュニジア
  • 登録状況: 1979年:新規登録,2010年:範囲拡大
  • 区分: 文化遺産
  • 登録基準: (ⅳ)、(ⅵ)
世界遺産検定 対策トップへ »
詳細情報
北アフリカ最大級のローマ円形闘技場が残る。
楕円形のアリーナと観客席は石造技術の粋を示す。
公共娯楽施設としての都市文化を物語る。

もっと詳しく

エル・ジェムの円形闘技場は、古代ローマ属州アフリカの都市ティスドルス(現在のチュニジア・エル・ジェム)に、3世紀前半(238年頃)に建設されたと考えられている。当時のティスドルスはオリーブ油の交易で富を築いた都市で、その経済力を背景に、ローマ本土のコロッセオや南イタリアのカプアの闘技場に匹敵する規模の公共施設が建設された。属州都市でこれほど大規模な闘技場が築かれた例は珍しく、当時のティスドルスの繁栄ぶりを物語る証拠とされている。

闘技場は長径約148メートル、短径約122メートルの楕円形の外郭を持ち、内部のアリーナは約65メートル×39メートルの規模を誇る。観客席は最大で3万人以上を収容できたと推定され、ローマ帝国内でも屈指の規模を誇る闘技場のひとつである。石材を積み上げたアーチ構造の観客席は3層からなり、コロッセオと同様のヴォールト技術や動線設計が採用されている。都市を防御する城壁がない開けた土地に単独で建設されている点も特徴的で、周囲の平坦な地形の中にひときわ大きな姿を見せている。

世界遺産としての登録基準(iv)は、建築様式や技術の発展における顕著な段階を示す建造物であることを意味し、この闘技場が示すローマ属州建築の到達点を評価するものである。基準(vi)は、剣闘士競技や公共娯楽といった古代ローマの社会的・文化的伝統と直接結びついていることを評価する基準であり、闘技場が単なる建造物ではなく、当時の都市生活や娯楽文化を体現する場であったことを示している。

闘技場は完全な発掘が行われていないため、地下通路(剣闘士や猛獣の待機空間)の詳細は今も研究が続けられている。保存状態の良さから近代以降は映画撮影のロケ地としても利用されており、古代ローマ建築の迫力を伝える象徴的な遺跡として国際的にも知られている。現在は毎年夏に国際交響楽祭(フェスティバル・アンテルナショナル・ド・ミュージック・サンフォニック・デル・ジェム)の会場としても使用されており、古代の遺跡が現代の文化イベントの舞台として活用されている点も特徴的である。

よくある質問

Q. エル・ジェムの円形闘技場はいつ、誰によって建てられましたか?
A. 3世紀前半(238年頃)、ローマ帝国の属州アフリカに位置した都市ティスドルスに建設されたと考えられている。特定の建築家名は伝わっていないが、当時の属州総督ゴルディアヌス(後の皇帝ゴルディアヌス1世)の時代に築かれたとされる。

Q. どのくらいの人数を収容できましたか?
A. 推定で3万人以上を収容できたとされ、北アフリカ最大級、ローマ帝国全体でも屈指の規模を誇る円形闘技場である。

Q. コロッセオとの違いは何ですか?
A. 基本構造や規模はローマのコロッセオに類似するが、都市の城壁や周辺建造物に囲まれず、開けた土地に単独で建てられている点が異なる。そのため遠方からもその威容を望むことができる。

Q. 現在はどのように利用されていますか?
A. 観光地として一般公開されているほか、毎年夏には国際交響楽祭の会場としても使用されている。

旅行情報

チュニジアの首都チュニスから南へ約200km、鉄道(チュニス~スファックス線)や幹線道路で結ばれたエル・ジェムの町の中心部に位置する。町の駅から徒歩圏内にあり、内部見学が可能な観光地として通年公開されている。
写真
エル・ジェムの円形闘技場
ページトップへ戻る